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おすすめ:中国の妖怪
中野美代子/岩波新書/1983/1985第4刷
龍の起源と系譜を求めて、いくつかの本を見たが、この本が一番良かった。「読んだ」と言えるのはこの本だけ。まず一般人にとって、読みやすい。それから中身についてもつっこんだ考察が加えてあり、深みがある。古文献の紹介・レビュー的な本が多い中で、出色。私の「蛇足」の一文も、多くをこの本から要約・引用させて頂いたものです。(もし誤った引用等ありましたらごめんなさい)
この第1話をご覧頂いた方で、おもしろい本をご存じでしたら、ぜひ教えてください。 |
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これに対して虹霓は、古文書では瑞兆とするよりも凶兆とする記述のほうが多いそうで、やはり自然こそ恐るべし、ではないでしょうか。
麒麟や鳳凰を手中にして、政治的に使役することができた皇帝も、自分の力の及ばないところで、現実に妖しく光り輝く虹霓を目の当たりにすれば、やはり恐れおののくほかなかったのでしょう。
なお、虹(にじ)を蛇身双頭の龍になぞらえるのは中国ばかりではなく、西アジアやオーストラリアのアポリジニの神話にも出てくるそうです。
さて、龍のイメージは蛇がもとになっています。蛇は見るからに気持ちの悪いものですが、脱皮して成長することから人々は不思議な再生の生命力を感じ、また毒蛇のひと咬みが人を死に追いやったり、あるいは神経毒の作用で人を異常な精神状態にさせるのを見て、不思議な神憑りの通力を感じたのでしょう。古来、蛇は神または神の使いと考えられ、古代の絵画などでは、しばしば角を生やした形でその霊性を象徴させて描かれています。
蛇に角を生やし、さらに足を付けて龍が誕生しました。最初は龍は、竜巻、雷、稲妻、大雨、黒雲・・・・人間は理屈なしの恐怖感をおぼえ、また現実にその凶暴な力のためにしばしば傷つけられた(なんと蛇そのものの性質を保っていることか)・・・・が人間の網膜に焼き付けた、自然の力そのものでした。ところが龍はやがて麒麟や鳳凰と同じく中国の皇帝にとらえられ、飼い慣らされて帝室の紋章を飾ったり、お寺の境内で口から清水を吐いて、善男善女の手を清めるお手伝いをしたりと、すっか
り人間に奉仕する立場になるのですが、龍の母たる蛇のほうは未だに野生を保ち続け、現実に人間を脅かしつづけています。 |