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談話室  第27話 由比〜興津は興津から歩くに限る
2009/01/02

 東海道五十三次を歩くのは静かなブームとして続いている。
 1週間前に聞いた従兄の 「 東海道歩き中 」 の談を思い出した妻の発案で、2008年12月30日にその 「 歩き 」 をつまみ食いするような形で由比〜興津間を二人で歩いた。 この年末、好天が続いた。 前夜突然思い立って天気予報を調べ、富士山が見える! と信じて海道歩きを決めたのだった。

 歩いてみて先ず思ったのは、「 さった峠 」 からの富士山の眺望は、素晴らしいの一言 ( 平凡過ぎる表現で書くのも恥ずかしいが、先ずこれをかかなくては! ) 。 次に思ったのは、この間を歩くには、興津から歩き始めて由比に出るルートに限る、と言うこと。
 なぜなら、1番目には常に富士山を前方に見ながら、富士に向かって歩けること。 富士を見るのに後ろを振り返る必要がない。
 2番目には、どちらかというと平凡な興津の国道1号を先に歩いてしまって、情緒あふれる由比の旧道の町並み歩きを後に取っておけること。 楽しみはあとに。
 3番目には、「 さった峠 」 への上りは急勾配ながら短時間で済ませ、峠から由比への長いだらだら坂は下り道にとれること。 これは楽だ。
 更に言えば、歩きが終わったあとの楽しみが4番目にある。 この紹介は文末のお楽しみ。
 だから、由比〜興津間の東海道歩きは、興津から歩くに限る、というわけ。

 この日は雲一つない快晴、穏やかで暖かな日和。 「 さった峠 」 からの富士の眺望はまるで絵に描いたよう。 いや、広重が 「 絵に描いたとおり 」 の絶景を楽しめた。




 自宅を6時半に出て、東京駅を8時03分発の 「 ひかり 」 に乗った。12月30日で混み具合が心配だったが、1号車に乗ったのは15人くらいだった。 静岡には9時06分着。 ネットで作った行程表では24分発の沼津行きで由比に戻る予定が、14分発の興津行きに乗ってしまった。 9時30分終点興津着。 ホームに降りて、少し離れた向かいの改札横の案内板をジっと見つめると 「 さった峠 2km 」 と見える。 「 これは! 」 と跨線橋を渡って近くに寄って確かめるとそのとおり。 これなら由比から 「 さった峠 」 よりも近い。 それに富士山をいつも正面に見ながら歩ける。 そこで次の 「 沼津行き 」 を待たずに途中下車して歩き始めた。

 興津の人情は温かい。 行き交う人がみなさん 「 おはようございます 」 と声を掛けてくれた。 道ばたには無人でミカンを売っている。 1袋100円と安いので一つ買う。 小振りで形はそろっていないが甘くておいしい。 9個入っていたから1個11円の勘定。

 世の 「 東海道を歩くガイドブック 」 は全て東京から京都に向けて歩くように書いてあるので、逆コースではちょっと不便。 しかし道標がしっかりしているのでほとんど問題はない。 ただ一ヶ所、地図中で山にかかって北東に進む道が、墓地に行き当たって終わってしまうところ。 墓地の真ん中の通路が、その先は急坂を登る階段になって森の中に消えている ( 地図中で 「 洞トンネル 」 とある、『 ル 』 の辺り )。 ここで右に折れる道もあって迷った。 しかし墓参の人に聞くと、墓地の真ん中を通って急坂に取りかかるのが正解だった。 墓地の入り口に進むと道標があった。 もう少し手前に ( 興津側に ) 立ててくれればいいのに。

 「さった峠」からの絶景は前述の通り。 そのポイントからの眺望ばかりでなく、常に富士に向かって歩いているので、いろんな情景の中を富士を眺められる。 ミカン畑越しの富士もご覧下さい。

 由比へは緩い長い下り坂を楽に下る。 西倉沢からは昔の香りを伝える民家が続く。

 途中でたっぷり時間を使ったので、由比駅前着は午後1時前。 ここで4つ目の楽しみが待っていた。 遅い昼食を取るために駅前通りを東に100mくらい行ったところでたまたま入った寿司屋の銀太、これが大当たりだった。

 銀太は込み合っていたが、「 地魚のにぎり 」 8種1,575円を頼んで暫く待つ。この店では 「 桜えびのフルコース 」 も看板メニューでこれを頼む人も多い。 しかし 「 地魚のにぎり 」 も良かった。 1時間近くジっと待って、この日出てきたのは、ひらめ、たちうお、まだい、あじ、あこうだい、くろだい、ほうぼう、桜えび。 店主の説明があって、それから食すると、ことごとく美味。 鰺は 「 根付きの鰺 」 が年に数本入るそうだ。 写真でその姿を見ると、体長は普通の鰺の1.5倍くらいかと見えるが、身の厚さは2倍以上。 店主の説明では、富士川と興津川が運ぶ栄養豊かな河川水が由比の沖でぶつかって、半分は沖に運ばれるが残り半分が由比の浜の方に戻って滞留する、ここにプランクトンがたくさん育って、それを食った鰺の中に大きく育つ 「 根付きの鰺 」 ができる。

・・・「 根 」 というと防波堤釣りでは海底の岩の根を想像するが、漁師さんの 「 根 」 はちがうらしい・・・

 シマアジか、と疑うようなその 「 根付きの鰺 」 の姿だが、お味の方もシマアジ級。 たいへんおいしかった。 運がよいとそういう目に遭うことができる。

 帰宅してからネットで調べると、銀太ファンはいるもので、
● テレビ静岡 ( http://www.sut-tv.com/ ) の、静岡グルメバラエティ−「くさデカ」の、
  超美食大戦 ”駅前の自慢のアレ下さい! 由比駅前” 『銀太』 に詳しい。
 また、
● マジメ時々くだらないブログ ( http://dreamexp-903.at.webry.info/ ) の
  蒲原御殿山さくらまつり&由比散策 にも紹介がある。

帰りは由比から在来線を乗り継いで帰った。 ・・・とても楽しい東海道のつまみ食い歩きだった。


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FURUICHI, Makoto