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音楽室第12話 京言葉風で作曲しました


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(1)不思議な本
 森 博達 著、「 日本書紀の謎を解く〜述作者はだれか〜」(中公新書1502, 1999年10月)を読みました。不思議な本です。内容は大変専門的で、精読しようとすると大変なエネルギーが要ります。『よくこんな難しい本が新書で出たなぁ』と不思議に思いました。精読するのは10年くらい経ってからだナ、と思って、ザーッと斜め読みしました。

 しかしおもしろい本です。日本書紀はどの部分からだれが書き始め、その後になってどの部分がどんな人によって書き足されたかがよくわかると書いてあります。
 その話はこれまでにして、氏は書紀をじっくり読めば昔の日本語のアクセントが復元できる、と言います。そして、万葉集巻三、266番 柿本人麻呂の、

    淡海の海 夕浪千鳥 汝が鳴けば 心も慕に  古へ思ほゆ

の歌のアクセントを次のように復元しておられます。


    アフミのウミ ユフナミチどリ ナガナけバ こころもシノニ イニシヘオもホユ
    LLHLLH HHLLLHL HHHLL LLHFLLH HHHLLLLF

 ここで、Lは低平調、Hは高平調、Fは下降調とのことです。ひらかなは上代特殊仮名使い乙類の発音です。
 更に氏は、人麻呂の歌の詠唱法を示しておられます。


    アフ−ミの-ウミ-−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    LL HL LH

    ユフ−ナミ−−チど-リ-−−−−−−−−−−−−−−−−
    HH LL  LH L

このあとまだまだ続くのですが、毎句17秒、更に句末に3秒の休止 だそうです。

(2)あふみの海
 さてここからがこのホームページの本論ですが、森氏の言う詠唱法とは別に、しかし氏の言う古代語のアクセントを重視して、勝手に音程を付けてみました。いにしへの、京言葉アクセントでの作曲です。

(3)安産のお守り売りの歌
 これに勢いを得て、30年前に文字で見たことがある、祇園祭の安産のお守り売りの歌について、「たしか京都弁(失礼、京言葉?)はこんなアクセント・イントネーションだったか」という、大変いい加減な記憶で、節を付けてみました。日本書紀史上最も勇敢だった帝王・神功皇后は、祇園祭では占出山にお座りになって、安産の神様として信仰を集めているようです。
 下の節回しは私のイメージの中の京言葉アクセントで付けてみたいい加減なものですし、そればかりでなく歌詞の方も古い記憶に頼ったいい加減なもの、ということをおことわりしておきます。

 1段目の「出ます」は良くても2段目の「出ません」は歌いにくい、などと思われるでしょう。私にとっては歌いにくくても良いのです。「これが京都弁のアクセント・イントネーションだ」(ただし私のイメージの中の)というところから節を付けているわけですから。
 なお、(クリックするといきなり音楽が始まってしまうので、特にまわりが寝静まった深夜にご利用になる場合は要注意ですが)京のわらべ歌というサイトで「ご安産の・・・」という midi がありす。これが正調なのでしょう。

(4)春はあけぼの
 さらにこれに勢いを得て、枕草子にも節を付けてみました。学校で習った枕草子は

のような調子で、まず書いてもないのに「いと おかし」が省略されているのだと教えられます。そしてアクセントはどう考えても東京弁のものです。(清少納言が東京弁でしゃべるか?!)
 しかし今では京言葉のアクセントで枕草子を朗読するとか、「清少納言は春は曙が良いとも悪いとも言っていないのだから」と、『春って曙よ!』という現代語訳が出現したりしています(橋本治・桃尻語訳 枕草子)。
 そこで私は京都人ではないので正調京言葉のアクセントを表現できるわけではないのですが、
_____(i) 『春って曙よ!』のノリで、
_____(ii) (私のイメージの中の)京言葉アクセントを尊重しつつ、
_____(iii) 次第に明け行く情景を表現する
ということで節を付けてみました。


 「やうやう」は「ヨーヨー」ではなく、字の通り「ヤウヤウ」と発音しないといけないんでしょうね。「はる」の「は」は、「パ」とか「ファ」なんて発音するのでしょうか。

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FURUICHI, Makoto 2004/08/23